- 1000年近く続いていたマヤ文明の大都市ティカルは、9世紀後半に滅びた
- 新たな研究は、都市の貯水池の堆積物からアオコの発生や、水銀の混入を発見
- 水質汚染と干ばつが重なったこと、また水銀で指導者層が失われたことが荒廃の原因としている
古代マヤ文明の都市ティカルは、政治・経済の中心地であり、ピーク時には人口が10万人を超えていたと推定されている大都市です。
この都市は2世紀から9世紀まで、およそ700年以上も繁栄を続けていたと考えられ、まさに千年王国と呼べる都でした。
東京が江戸から数えても400年の都と考えると、その凄さがよくわかります。
しかし、このティカルは紀元9世紀後半に放棄され廃墟となってしまいました。
これほどまでに発達した都市が、人々に捨て去られた原因はなんなのでしょうか?
新たな研究はこの都市の貯水池をを調査し、ティカルでは飲料水が飲めなくなるほど水源が有毒物質で汚染されていたという発見を報告しています。
アオコ(青粉)の大発生
ティカルは現代のグアテマラ北部で栄えた古代都市です。
ティカルの周辺は肥沃な土地ながら、激しい干ばつが起こりやすく、湖や川からも遮断された地域でした。
こうした都市で重要な機能を果たしていたのが、雨水を貯めて人々に飲料水を提供していた貯水池です。
シンシナティ大学の生物学者や化学者、植物学者などを多様な研究者を含むチームは、この都市にあった10の貯水池を調査し、都市の給水システムが人口を維持できたかを探りました。
その結果、4つの貯水池の堆積物からシアノバクテリア(藍藻:らんそう)のDNAを発見しました。
シアノバクテリアとは、アオコ現象の原因とされるもので光合成をする細菌です。
アオコは青い粉を撒いたように水面が藻類で覆われる現象です。現代の日本の湖沼でも見られることがあり、水質汚染の代表的な例とされています。
ティカルの貯水池からは有毒な化学物質を生成する2種類の藻類―プランクトスリックス(水道水のカビ臭の原因)とミクロキスチス(神経毒を生成)―が見つかりました。
これらの藻類の問題点は沸騰に強いという点です。水を沸騰させても、飲んだ人は病気になっただろうと研究者は語ります。
ただ、これは見た目からして貯水池がひどい状態だったことを示しています。おそらく誰もそんな水は飲もうと思わなかったでしょう。