恐竜時代の哺乳類は単なるネズミではなかった
恐竜の時代、哺乳類は陰で生きるネズミのような存在だったと考えられてきました。
しかし21世紀に入ってから恐竜時代の哺乳類の研究が飛躍的に進歩し、当時の哺乳類は小さいながらも多様化を進めていたことが分かってきています。
哺乳類は恐竜が全盛をふるうなかで、陸上・半水棲・樹上さらには現在のモモンガのように滑空能力を持ったものなど、極めて多様な姿を持つようになっていたのです。
これら生態学的多様化は、同じように変化に富んだ食生活を可能にし、草食・昆虫食・肉食・雑食など様々な食形態をもつ哺乳類の存在が明らかになりました。
今回の論文の第一著者であるオーガスティン氏も、そんな恐竜時代の哺乳類を研究している一人です。
彼はある日、恐竜の骨に奇妙な噛み跡を発見し、ハッとしたとのこと。
というのも、同じような奇妙な噛み跡を中国で発見された恐竜の骨にもあったことを思い出したからです。
早速オーガスティン氏は、化石の分析にとりかかりました。
オーガスティン氏は分析の結果、巨大なマメンチサウルス科の首の骨の化石から、哺乳類しかつけられない「左右対称」の噛み跡を発見しました。
1億6000万年前のジュラ紀後期において、このような左右対称の歯をもつ動物は哺乳類以外存在しません。
哺乳類の祖先は2億5100万年前に起きた巨大噴火と酸素濃度の激減(30%から10%に)により恐竜に支配権を譲っていたものの、恐竜よりも優れた歯を持っていたことが知られています。
左右対称の歯は高度な噛み合わせ、噛み切り、磨り潰しを可能にしていました。
一方で、この時期の恐竜の歯は一定の間隔をあけてはえているだけで、歯を使った複雑な摂食行動は不可能であり、もっぱら巨大化したあごの筋肉に頼っていました。