はじめて発見された「食べられた後」の能動的脱出者
神戸大学の生態学者である杉浦准教授は、カエルが昆虫を食べる様子を観察するのを日課にしていました。
いくつかの昆虫はカエルに嘔吐をうながす成分を持っており、カエルによる捕食を回避することができると分かっています。
杉浦氏はこの昆虫の持つ捕食回避能力に注目しており、様々な昆虫をカエルに食べさせ嘔吐反応が起こるかを確かめていたのです。
ある日、杉浦氏はカエルのエサにマメガムシを選びました。
マメガムシは日本の水田に棲む水生の昆虫で、同じく水田に棲むカエルにとってはエサになりえます。
ですが杉浦氏がマメガムシを与えたカエルを観察していると、カエルに与えたはずのマメガムシが、総排出腔(肛門)から抜け出し、走り去っていく様子を確認できたそうです。
これまでの捕食にかかわる研究は、被捕食者が「食べられる前」に焦点をあてて行われてきました。
そのため、食べられた後についての研究は進んでおらず、知られているカタツムリや魚卵などの脱出例も、全て捕食者の行う排泄にあわせた受動的な脱出ばかりでした。
しかし杉浦氏が目撃したマメガムシが脱出していく様子は極めて能動的だったのです。
よって目撃した行動が正しければ、この小さな発見が捕食後の能動的脱出を行う生物の、最初の例になる可能性があるのです。
問題は、どうやって証明するかでした。