窒息しなかったのは水生昆虫だから
今回の研究によりはじめて、食べられた後に能動的に脱出する生命が存在することがわかりました。
カエルの消化管内部は極端な酸性条件にあるだけでなく酸素の乏しい嫌気的な環境です。
このような過酷な環境を生きたまま通過するには迅速かつ能動的な動きが必要不可欠です。
事実、マメガムシの脚を粘着性のあるワックスで固定した場合、生き残ったものはいませんでした。
マメガムシは明らかに肛門を目指して移動していたと言えるでしょう。
ただカエルの肛門は強力な括約筋で閉じられており、小さなマメガムシが脱出の最終段階として、自力でこじあけることは難しいと考えられます。
そのためマメガムシはなんらかの方法でカエルの消化管を内側から刺激し、排出をうながしている可能性があるとのこと。
またマメガムシが生存に適した性質をあらかじめ備えていたのではないか、と杉浦氏は考えています。
水生のマメガムシは硬い表皮の下の翼の層に、水中で呼吸するためのエアポケットを備えており、窒息を防ぐことが可能だったからです。
さらに頑丈で滑らかな外骨格は身体を消化液から保護するとともに消化管内部でのスムーズな動きを可能にします。
杉浦氏は今後、さらに様々な種の捕食を調べ「食べられた後」の脱出を行える生物を探していくとのこと。
もしかしたら想像を絶する捕食回避能力をもった生物がいるかもしれません。
研究内容は神戸大学の松浦真治准教授によってまとめられ、8月4日に学術雑誌「Current Biology」に掲載されました。
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(20)30842-3