白亜紀に存在した「デイノスクス」は、史上最大のワニとして有名です。
1850年代にアメリカで化石が見つかって以来、今日までに3種類のデイノスクスが確認されています。
しかし今回、米・アイオワ大学、ニューヨーク工科大学らの研究により、新種のデイノスクスが化石から同定されました。
研究チームによると、新種の全長は10メートルに達し、バナナほどの大きさの巨大な歯で恐竜たちを捕食していたとのことです。
鼻孔とは別に謎の穴を2つ確認
既知のデイノスクスは、D. ルゴサス、D. ハッチェリ、 D. リオグランデンシスの3種です。
しかし、専門家の中には「3種を断定するには化石の情報量が不十分であり、同じ1種かもしれない」とする意見もあります。
そこで研究チームは、北米各地で見つかったデイノスクスの化石とテキサス西部で新たに見つかった化石を集め、再分析しました。
その結果、上記3種とは異なる新種の特定に成功。学名は「デイノスクス・シュワイメリ(Deinosuchus schwimmeri)」と命名されています。
D.シュワイメリは、約約8200万〜7500万年前のアメリカ東部、現在のニュージャージーからミシシッピの間の大西洋岸に生息したとされます。
D.シュワイメリには、他のワニには見られない特徴を持ち、鼻先が球体状に太く膨らみ、その先端に謎の穴が2つ空いていました。
何のための穴かは不明ですが、現段階では「体温調節の機能があったのではないか」と推測されています。
一方、化石を再調査していると、D. ルゴサスは、他の2種(D. ハッチェリ、 D. リオグランデンシス)と誤認しており、存在しない可能性が浮上しました。
いずれにせよ、この2〜3種は新種とは反対のアメリカ西部に生息し、歯もバナナサイズほどはありません。それでも研究主任のアダム・コセット氏は「どの種であっても、恐竜たちの脅威になったことに変わりはない」と指摘します。
デイノスクスとは、ギリシャ語で「恐ろしいクロコダイル」を意味する言葉。
その名が示す通り、ふらりと水辺にやってきた数多くの恐竜を恐怖のドン底に引きずり込んだのかもしれません。
研究の詳細は、8月10日付けで「Journal of Vertebrate Paleontology」に掲載されています。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02724634.2020.1767638