「ワニの涙(crocodile tears)」といえば、西欧世界では、偽善や空涙を意味する言葉です。これは、古代ヨーロッパで「ワニは獲物を誘うためにウソ泣きし、涙を流しながらエサを食べる」という迷信から来ています。
この真偽はともかくとして、ブラジル・バイーア連邦大学の研究によると、ワニとヒトの涙は化学組成の面でほぼ一緒であることが新たに判明しました。
ワニの涙の研究は、今回が世界で初めてとなります。
ワニが2時間もまばたきせずにいられる理由が判明!
涙は、目を健康に保つ上で欠かせない物質です。
一般的に、水分と油分、粘液で構成されており、それらが結合して目を覆うことで、タンパク質やミネラル分を供給します。乾燥や感染症の予防、ゴミの除去としても有用です。
生物における涙の研究は、眼球の進化を考えるためにも必須なのですが、これまでは、ヒト、イヌ、馬、サル、ラクダといった哺乳類のごく一部しか対象とされていませんでした。
そこで今回初めて、鳥類と爬虫類から涙を採取し、その化学組成を調べました。
対象となったのは、インコ、タカ、フクロウ、オウム、カメ、カイマン(ワニ)、ウミガメの7種です。比較のため、健康な成人10名からも涙を採取しています。
その結果、涙に含まれる電解質(ナトリウムや塩化物)は、ヒトおよび鳥類、爬虫類で組成がかなり似通っていました。
一方で、カイマンとフクロウの涙では、ヒトやその他の生物よりもタンパク質の濃度が高いことが分かっています。これは、カイマンとフクロウの目が大きく、あまりまばたきをしないことが関係しているようです。
ヒトは10〜12秒ごとに瞬きをしますが、カイマンは一度もまばたきせずに2時間目を開けていられます。
その秘密は、涙の中のタンパク質の多さにあるのかもしれません。