テキサス州のバランスロック。
テキサス州のバランスロック。 / Credit:wildmoments
geoscience

「不安定な岩」から地震のリスクがわかる? 地域の地震リスクを再評価する研究

2020.10.17 Saturday

世界には、見るからに危険そうな状態でも不思議とバランスを保って長い年月維持されている岩石があります。

そんな不安定な岩の姿は世界の珍景として紹介されることがありますが、こうした岩が多くの人の命を救う研究に役立つかもしれません。

10月1日の科学誌「AGU Advances」に掲載された新しい研究では、絶妙なバランスを保つ奇岩を詳細に分析することで、その地域のはるか過去にさかのぼった地震の履歴や、地域の地震ハザード分析を見直すために利用できる可能性を報告しています

言われてみればという感じですが、研究ではこの方法によって既存の地震ハザードモデルの不確実性を大幅に削減できるといいます。

Imperial College London https://www.imperial.ac.uk/news/205493/earthquake-forecasting-clues-unearthed-strange-precariously/ , Sciencemag https://www.sciencemag.org/news/2020/10/precarious-rocks-help-refine-earthquake-hazard-california , sciencealert https://www.sciencealert.com/precariously-balanced-rocks-are-teaching-scientists-more-about-earthquake-risk

世界の危なそうな不安定岩石

イギリスのブリムハムロック。
イギリスのブリムハムロック。 / Credit:en.Wikipedia

今にも崩れそうな不安定なバランスの岩石。こうした奇岩は世界のあちこちで確認されています。

地質学者が使う公式用語では、こうした不安定な岩はPBR(英: Precariously Balanced Rocks)と呼ばれたりします。

日本の長崎県にも「継石坊主(つぎいしぼうず)」というものがあります。

長崎県時津町にある落ちてきそうな奇岩「継石坊主」。
長崎県時津町にある落ちてきそうな奇岩「継石坊主」。 / Credit:sabakusarakashiiwa.com

この岩は別名「鯖くさらかし岩」と呼ばれていて、街へ鯖を売りに行こうとした漁師がこの岩の下に差し掛かったとき「きっとすぐに落ちてくるに違いないから、落ちるまで待とう」と待っていたら商品の鯖が腐ってしまったという、「まんが日本昔ばなし」でも紹介された古い逸話があります。

PBRが形成される理由は、周りの柔らかい岩が侵食されて硬い岩の部分が残った場合や、後退する氷河が岩を不安定な位置に残していった場合などあります。いずれにしても危ういバランスでありながら、昔話になるくらい長期間、状態が維持されているのです。

また実際はもっと古く、何万年も維持されている可能性さえあります。

今回の研究チームが着目したのは、そのバランスがこの地域で起きる地震の揺れの上限を与えてくれるのではないか? ということだったのです。

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