光刺激の出発点を変える
今回の実験で使われた盲目マウスは、視細胞(錯体: さくたい、桿体: かんたい)が病変しており、光受容体が失われていました。
視細胞にある光受容体は目が光を最初に感知するために使われており、この1番目の光感知のポイントの喪失が必然的に盲目へとつながります。
そのため既存の遺伝子治療は、いかにして光受容体の機能を回復させるかに集中していました。
ですが今回、研究者たちはあえてこの1番目のポイントを無視しました。
光受容体が失われていても、光感知の2番目のポイントが反応してくれるように遺伝子を書き換えれば問題ないと考えたからです。
研究者たちはこの2番目のポイントとして双極細胞とよばれる細胞を選びました。
双極細胞は視細胞からの刺激を脳へと続く神経へ伝達する仲介役として知られています。盲目マウスは視細胞を失っていましたが、幸いにもこの双極細胞は無傷のままでした。
もしこの双極細胞に光受容体に似た光を感知する遺伝子を組み込むことができれば、光受容体に依存せずに、光の刺激を脳に送ることができるはずです。