通常は宇宙空間にしか存在しない分子
シクロプロペニリデンはとにかく反応性が高く、これまで発見されたのは星間領域にある分子雲の中くらいでした。
星間領域にある分子は非常に冷たいため化学反応を起こしにくい状態です。さらに星間ガスが拡散して存在しているため、なおさら反応は起きにくくなります。
そのような環境でなければ単体で存在できない分子なのです。
しかし、今回の発見はタイタンの大気中でした。タイタンは地球よりも大気が濃密な世界で、その地表大気圧は地球の1.5倍、大気密度は4倍です。さらに雲、雨、湖、川、さらに塩水の海も持っています。
そんな化学反応の巣窟のような場所で、シクロプロペニリデンが見つかるというのはまさに予想外のことだったのです。
タイタンが太陽系の中でもかなりユニークな天体であり、新しい分子の宝庫であることは証明されています。しかし、なぜタイタンの大気にシクロプロペニリデンが存在できるのか、また他の惑星では見つからないのかは現在のところ不明です。