生命誕生直前の地球環境を再現しているタイタン
タイタンは、土星の持つ62個の衛星の中で最大であり、太陽系に存在する200以上の衛星の中でもっとも地球によく似た場所だと言われています。
研究者たちはタイタンの居住可能性に興味を向けているとのこと。
その理由が、タイタンの大気組成にあります。タイタンの大気は地球と同じようにほとんどが窒素であり、そこに僅かなメタンが含まれています。
生命誕生直前の38億年前から25億年前の地球は、酸素の代わりにメタンが大気を満たしていました。これは現在のタイタンの環境にそっくりな可能性があります。
科学者たちはタイタンが古代の地球を再現した実験場と捉えていて、原初の地球で生命誕生に関与した重要な化学反応をそこで見ることができると期待しているのです。
シクロプロペニリデンは炭素ベースの環状分子です。シクロプロペニリデン自体が生命の構造に関与しているという知識は現在のところありませんが、炭素ベースの環状分子はDNAの核酸やRNAなど、生命を構成する要素として重要な役割を担っています。
これまで閉じた環状炭化水素分子といえば「ベンゼン(分子式: C6H6 )」でした。これはどこの惑星大気でも発見されていて、大気中で発見できる環状炭化水素分子の最小単位だと考えられていました。
しかしシクロプロペニリデンはベンゼンの半分の炭素原子で構成可能です。
分子は小さく単純なほど、反応を速く起こすと予想されています。そして小さな分子が関与する反応は、より多様な化合物を生み出す可能性が高くなると期待されているのです。
シクロプロペニリデンの大気中での発見は、生命誕生に深く関与している可能性があり、しかもそれが原始地球にそっくりなタイタンで発見されたことは非常に興味深いことなのです。