雷を安全に誘導するレーザー誘雷技術とは?
雷は古来から人間が恐れてきた自然災害の1つです。
現代でも、精密機器の破壊や山火事など、さまざまな被害をもたらしています。
一般的な雷対策は避雷針を建てることですが、落雷はかなりランダムな現象でたとえすぐ近くに避雷針があったとしてもうまくそちらに落ちてくれるとは限りません。
特にオーストラリアでは森林への落雷による山火事の発生が大きな問題になっています。山岳地や平原など開けた自然環境では、落雷を安全に避雷針へ落とすというのはかなり難しい問題なのです。
そこで注目されている技術がレーザー誘雷です。
これは高強度のレーザーによって大気中の分子を破壊してプラズマを作り、避雷針へ雷を誘導する導線を大気中に作り上げるというもので、1974年にベルによって提案されて以降、長く研究が続けられています。
しかし、プラズマが1度形成されてしまうと、それがレーザーを吸収・散乱させてしまうため、継続時間が維持できなかったり、エネルギー効率の問題などがあり、まだ完全に成功している技術ではありません。
低強度で持続する精密なレーザー誘雷技術
今回の研究が示す新しい方法は、レーザー誘雷技術の抱える問題を一挙に解決できるかもしれません。
新しい技術では、プラズマを作るのではなく、空気中のグラフェン微粒子をビームによって捕獲し、それをレーザーで加熱します。
粒子を捕獲することで、局所的な空気密度が下がり、その粒子を加熱することで周囲の電子の移動可能な距離が増加されます。加熱された粒子はレーザーが止まった後もしばらく維持されます。
これによって低強度のレーザーによって長時間、精密な誘雷が可能な経路を作り出せるのです。
実験では、従来の研究の1000分の1のレーザー強度を使用していて、グラフェン微粒子によって放電するかどうかの限界の値を30%減少できることが示されました。