謎の青い環状星雲

これは「TYC 2597-735-1」と名付けられた星とその周囲を囲むリング状の星雲の画像です。
青い輝きは遠赤外線の光です。肉眼で直接見ることはできませんが紫外線宇宙望遠鏡「GALEX」の画像では、ぼんやりと青く輝くリングが明るい星を囲んでいるのがわかります。
さらに、その周りには赤い光の帯のようなものも見えます。
見た目には中心の星から急速に離れるように、ガスが膨張してリング状の星雲を作り出しているように見えます。
最初科学者たちはこれが単なる惑星状星雲であると考えていました。
太陽くらいのサイズの恒星は、その寿命の最後に膨張し物質を外側へ放出して環状星雲を星の周囲に作り出します。

しかし、ハワイのケック天文台など複数の望遠鏡から得られたデータは、その可能性を否定するものでした。
惑星状星雲と考えるには、あまりに周囲に破片が多かったのです。
こうなると考えられるのは、2つの星の衝突した残骸だという可能性になります。
天の川銀河には2つの星が回りあう連星系が数多くあり、これらの連星はいずれ星同士が接近して合体し終焉迎えることがあるのです。
しかし、単に恒星の衝突と考えた場合にも矛盾するデータがありました。
「TYC 2597-735-1」は水素が不足していてかなり古い星であることが示されているのに、その周りからは多くの赤外線放射が観測されたのです。
これは、若い星の周りによく見られる土星の環のような降着円盤の存在を示唆するもの。
こうした見え方は天体の衝突にも適合しません。
調べれば調べるほど謎が深まる一方で、研究者たちは困惑してしまいました。