フグは自分で毒をつくれない
それから、フグのもうひとつの武器は「毒」です。
ほとんどの種類は「テトロドトキシン」という有毒物質を持っており、捕食者にとって致命的となります。
実は、このテトロドトキシンは、フグ自体がつくり出すものではありません。
フグは、有毒なプランクトンや海洋細菌、貝類、ヒトデなどを食べることで、その毒成分を体内にため込んで自分のものにしているのです。
毒素はおもに卵巣、精巣、肝臓、腸、皮膚にあり、細心の注意で調理しないと、肉に広がってしまいます。
致死量が2〜3mgほどで、毒性の強さは青酸カリの500~1000倍以上に達します。
テトロドトキシンは神経性の毒で、神経の適切な機能を壊して筋肉のコントロールを失わせ、窒息や心不全を引き起こします。
今のところ、フグ毒の有効な解毒剤はありません。助かるには、体内から毒素が排出されるのを待つしかないのです。
ちなみに、フグ中毒者の最も古い記録は、キャプテン・クック(1728〜1779)であり、1774年の太平洋航海中にフグの肝を食べて倒れたと伝えられます。