人間には「匂いのマーキング」が通じない
猫が人間の生活圏に入り込むんだのは、およそ1万年前。
広大な砂漠地帯に住んでいた野生の猫は、同じ種のメンバーに出会うことは極めてまれであり、コミュニケーションをとるために声を使う必要がありませんでした。
代わりに野生の猫たちがコミュニケーションに用いたのは自分の臭いだったのです。
木に体をこすりつけたり排尿することで発生する匂いは、長い間同じ場所に留まり続けます。その匂いを自分をあらわすマーキングとして利用していたのです。
しかし悲しいことに、この「匂いのマーキング」は、一緒に暮らすようになった人間には通じませんでした。
人間の嗅覚は鈍く、猫の残した匂いを嗅ぎ取ることができないのです。
人間に対していくら縄張りを主張しても、人間たちは勝手に肉や魚を焼き、食べてしまいます。
猫の感覚では、これはルール違反です。
縄張りの中の食べ物は、本来なら縄張りの所有者である自分のもの。
人間たちが焼いている肉や魚が、実は遥か離れた場所から獲ってきたものであったとしても、そんな都合は猫にとって関係ありません。
しかし人間を追い出すことは猫には不可能でした。