野良猫は「ニャー」と鳴かない
この場合、野生の掟に従うならば選択肢は2つしかありません。
このまま共存を続けるか、縄張りを去るかです。
しかし人間の提供する温かく安全な環境(家)を手放すことは、家畜化された猫にはもうできません。
厳しい砂漠での暮らしよりも、人間の保護下で家畜として暮らすほうが、より安全に子孫を残すことができるからです。
そこで猫たちはいつからか匂いではなく「ニャー」と鳴いて、望むものを得ることをおぼえました。
また、より強く可愛らしく鳴くことで、要求が通りやすくなることを学習していきます。
さらに猫にとって幸運だったことに、猫は人間にとって可愛らしくみえた点があげられます。
猫の顔における目の比率は、あらゆる哺乳の中で最大であり、人間の赤ん坊に似てみえたのです。
猫の人間に対する鳴き声を分析した結果、研究者たちは猫の鳴き声が犬や羊などの他の家畜に比べて「極めて操作的」であることを発見しました。
さらに継続的な観察により、人間との接点を持たない野良猫たちは「ニャー」を同種の仲間に対して使うことはきわめてまれであることが判明。
また野良猫たちの鳴き声は、飼い猫たちにくらべてより高周波の帯域(人間にとって聞こえにくい領域)にあることもわかりました。
一方で、人間に慣れた猫の鳴き声はより低く、人間にとって聞こえやすい周波数にありました。
人間が猫に話しかける時に、地声より1オクターブ高い「猫なで声」を発する光景がよく見られます。
実は猫も人間に対するときは本来の野生の声より低い音域で鳴いていたのです。
ただ問題は、この人間への適応が遺伝子によるものかが不明だった点です。