40万年前の人類は「冬眠能力」を残していた⁈
冬眠は特殊な代謝プロセスで体温を低下させ、エサの少ない冬時期を耐え抜く習性のことですが、必ずしも健康的なものではありません。
例えば、クマは冬眠中のエネルギー源(脂肪分)を補うため、大量にエサを食べてから冬ごもりに入ります。
もし十分な脂肪の貯蓄がないと、覚醒後に、くる病や副甲状腺機能亢進症、線維性骨炎などにかかってしまうのです。
これが冬眠の失敗例ですが、研究チームは今回、スペインの「シマ・デ・ロス・ウエソス(Sima de los Huesos)」という洞窟で発見された初期人類の骨に、これと同じ症状が見つかったと考えています。
アタプエルカ考古遺跡にあるこの洞窟では数多くの遺骨が出土しており、これまでに約43万年前のヒト科の骨が数千単位で見つかっています。
約20万年前に出現したホモ・サピエンス(現生人類)よりずっと古く、一部は「ホモ・ハイデルベルゲンシス」の骨と推定されます。
私たちの遠い祖先がかつて冬眠をしていたと断定するのは困難ですが、同チームは、それを示唆する痕跡を複数見つけました。
例えば、10代と思われる若い個体の骨には、ビタミンD欠乏症から生じる骨の軟化と欠損、およびその修復が1年サイクルで見つかっています。
これは、冬眠による日光不足(ビタミンDが産生されない)と脂肪分の欠乏(筋肉と骨が弱くなる)が原因とも取れるのです。
同チームは「当時の初期人類は、多くの哺乳類と同じように、冬前にできるかぎり大量の食料を食べておき、冬眠したのかもしれない。
骨の欠損は、その数ヶ月間で負ったダメージの痕でしょう」と述べています。
一方で、「人類の祖先が冬眠をしていたという説は、あくまでも仮定のレベルにある」と続けます。
40万年前といえば地球は氷河期にあり、とくに寒さの厳しい冬は1日を通して日差しも弱く、食料も枯渇していたでしょう。
そうすると、冬眠をしていなくても上のような症状が出たと思われます。
初期人類に冬眠能力があったことを証明するには、解決すべき問題点が山積みです。
しかし、人類も元をたどればクマやリスと同じ哺乳類なので、数十万年前までは冬眠に近い能力を残していたのかもしれません。