新種は約6400キロを旅していた?
観察された雄花は直径2ミリと非常に小さいですが、雄しべが約50本らせん状にびっしり並んでいます。
雄しべの一本一本には、花粉が入っている袋状の「葯(やく)」と、それを支える棒状の「花糸(かし)」が確認できました。
研究主任のジョージ・ポイナー教授は
「これほど小さいのに、細部がしっかり残っているのは驚くべきことです。
この標本はおそらく、多くの類似した植物クラスターの一部で、これだけが樹脂につかまって琥珀となったのでしょう」
と話します。
花の構造としては、茎の先端に卵型の中空器官があり、そこから50本の雄しべが生えています。
花粉が入った葯(やく)は、2部屋の小房にわかれており、横方向に開く弁が付いています。
こうした特徴から、新種の学名は「バルビロクルス・プレリスタミニス(Valviloculus pleristaminis)」と命名されました。
バルバ (Valva) は「バルブ(弁)」、ロクルス(loculus)は「小房」、プレルス (plerus)は「多くの」、スタミニス (staminis) は「雄しべ」を意味します。
研究チームは、新種の起源はかつての超大陸ゴンドワナにあり、分裂した大陸塊に乗って、オーストラリア辺りから約6450キロを横断し、現在の場所に移動したと見ています。
琥珀が見つかった陸地は「ウエスト・ビルマ・ブロック(West Burma Block)」と呼ばれており、これがゴンドワナから分断した時期はよくわかっていません。
中には2〜5億年前と推測する専門家もいます。
しかし、ポイナー教授は「被子植物の起源が1億年ほど前であることから、陸地の分断はそれ以後の可能性が高い」と新たな説を唱えています。
もし陸地の分裂後にこの花が誕生したなら、新種はウエスト・ビルマ・ブロックでしか見られなかったはずです。
今後、別の大陸で新種の化石が見つかれば、ポイナー教授の説が立証されるかもしれません。