壁にあたって通り抜けても音波が減衰せずに100%の出力で透過する
壁にあたって通り抜けても音波が減衰せずに100%の出力で透過する / Credit:Canva
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壁を100%すり抜ける音が確認される! 不思議な「クラインのトンネル効果」を初めて実証

2020.12.25 Friday

世界は壁抜けの達人で満ちているようです。

12月18日に『Science』に掲載された論文によれば、音の不思議な壁抜け現象を確認したとのこと。

発せられた音は、スタジオの防音壁よりも遥かに手ごわい完璧な音の絶縁バリア(フォノン結晶)を減衰することなく100%の出力を維持したまま通り抜け、向こうの空間に抜けていきました。

研究成果を応用することで、音響の世界は全く新しい段階に入るでしょう。

しかし、いったいどうしたら全く減衰しないまま音がバリアを壁抜けできるのでしょうか?

>参照元はこちら(英文)

sciencedaily https://www.sciencedaily.com/releases/2020/12/201223125745.htm

完璧なバリアは完璧なザルだった

私たちの宇宙に完全な壁は存在しない
私たちの宇宙に完全な壁は存在しない / Credit:wikiwand

完璧なバリアというのは、子どもでなくても誰でも憧れがあるものです。

あらゆる外部からの攻撃や振動を遮断し、自分だけの清浄な空間を持てるとしたらどんなに幸せでしょう。

しかし残念なことに、完璧なバリアというのは、人間の脳内にしか存在しない概念のようです。

や電子といった波の性質を持つ存在は、どんなに堅牢なバリアでも確率的に通り抜けてしまう通常のトンネル効果をもつだけでなく、むしろ強固な壁に垂直に当たると100%通過してしまうという、特殊なトンネル効果を発動させるのです。

この常識にも直感にも反する型破りな現象はおよそ100年前、クライン氏によって理論が提唱さ「クラインのトンネル効果」と名付けられました。

このクラインのトンネル効果と呼ばれる理論が発動した場合、理論上、完璧な壁こそが最も完璧なザルに変貌します。

しかし今日にいたるまで、クラインのトンネル効果を直接的に観測する試みは失敗に終わっていました。

ですが今回、研究者たちは光や電子と同じく波としての性質を持つ「あるもの」を観測対象とすることを思いつきます。

次ページ音にとっての完璧な壁を用意する

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