完璧なバリアは完璧なザルだった
完璧なバリアというのは、子どもでなくても誰でも憧れがあるものです。
あらゆる外部からの攻撃や振動を遮断し、自分だけの清浄な空間を持てるとしたらどんなに幸せでしょう。
しかし残念なことに、完璧なバリアというのは、人間の脳内にしか存在しない概念のようです。
光や電子といった波の性質を持つ存在は、どんなに堅牢なバリアでも確率的に通り抜けてしまう通常のトンネル効果をもつだけでなく、むしろ強固な壁に垂直に当たると100%通過してしまうという、特殊なトンネル効果を発動させるのです。
この常識にも直感にも反する型破りな現象はおよそ100年前、クライン氏によって理論が提唱さ「クラインのトンネル効果」と名付けられました。
このクラインのトンネル効果と呼ばれる理論が発動した場合、理論上、完璧な壁こそが最も完璧なザルに変貌します。
しかし今日にいたるまで、クラインのトンネル効果を直接的に観測する試みは失敗に終わっていました。
ですが今回、研究者たちは光や電子と同じく波としての性質を持つ「あるもの」を観測対象とすることを思いつきます。