庶民に愛された味、かなりの人気店だった可能性も⁈
この建物は、古代ギリシャ・ローマ時代に「テルモポリウム(thermopolium)」として知られ、「温かい食べ物を提供する飲食店」という意味があります。
今でいうレストランですね。
しかし、テルモポリウムは貧しい人や家に台所がない庶民が訪れる場所で、富裕層や上流階級には蔑視の対象として見られました。
そういったことから、テルモポリウムは「早い・安い・うまい」が売りのファストフードや屋台に近いイメージです。
今回見つかったテルモポリウムは、石造りのカウンターに「ドーリア(土瓶)」という大鍋がいくつも埋め込まれていました。
中からは、マガモやヤギ、ブタ、魚、陸生巻き貝が見つかっており、食材の保存用に使われていたのでしょう。
また、これまでの研究で、ドーリアはナッツや豆などの乾物、温かいスープやシチューの保温鍋としても利用されたことがわかっています。
実際、ドーリアの一つからはソラマメをすり潰したものが見つかりました。
これは当時、ワインの風味や色合いを変えるために使われた材料でした。
カウンターの前壁には様々なフレスコ画の装飾が施されていました。
例えば、2羽のマガモやニワトリが描かれており、お店で取り扱っている食材を示しています。
他には、馬にまたがったニンフ(ギリシア神話の精霊)、タツノオトシゴに乗った女神ネーレーイス、リードに繋がれた黒い犬などがありました。
また、お店の様子を描いた絵も見つかっており、店舗の商標や宣伝として使われたと思われます。
マクドナルドでいう「M」マークのようなものでしょうか。
オッサーナ所長は「フレスコ画は、すべてのテルモポリウムに見られる訳ではなく、一部のオシャレな店舗だけ」と話しています。
今回見つかった店舗は、数あるテルモポリウムの中でも、かなりの人気店だったのかもしれません。
発掘作業は現在も続いていますが、オッサーナ所長によれば「来年にも一般公開を予定している」とのことです。