生後間もない赤ちゃんと抗生物質の影響
私たちの体はさまざまな細菌と共存することで成り立っています。
体に悪い菌が入ってしまった場合、抗生物質を用いた体内細菌の駆除を行いますが、この治療は体内の善玉菌も一緒に殺してしまいます。
赤ちゃんは誕生時、ほぼ無菌の状態で、そこから体に必要な細菌を獲得していきます。しかし、こうした時期の新生児に抗生物質を投与した場合、体にさまざまな影響が出る可能性があります。
イスラエルのバル=イラン大学の研究チームは、こうした影響を調査するため、フィンランドのとクルク大学病院が2008年から2010年の間に生まれた1万2千人以上の赤ちゃんを対象としたコホート調査のデータを調べました。
ここで調査された赤ちゃんには、乳児の成長に影響するような、遺伝的以上や慢性障害はなく、全体の9.3%にあたる1151人の新生児が、何らかの治療のために生後14日以内に抗生物質を投与されていただけでした。
ここから、6年間の成長記録を追った研究チームは、抗生物質を幼い頃投与された赤ちゃんのうち、男児だけが2歳から6歳までの間に有意に低い、身長とBMI(体格指数)を示したのです。
女児にはこの傾向は見られませんでした。
この観察結果は、ドイツで行われたコホート調査のデータからも同様に再現されており、生後間もない期間での抗生物質の投与、男児の発育に大きく影響していることが明らかとなったのです。
抗生物質の影響として考えられるのは、腸内細菌叢への影響です。
研究者は、6歳までの成長に腸内細菌叢の組成が関係している可能性を疑っていますが、この結果にはいろいろと不思議な事実を伴っているのです。