・15マイクロメートルの鼓膜での量子もつれ現象を達成
・極低温下の超伝導回路で鼓膜の機械的振動が量子もつれ状態になる
・振動の量子テレポーテーションの観測に期待
アインシュタインが「不気味な遠隔作用」として表現したことで有名な「量子もつれ」を、科学者たちが初めて実演しました。これは、大きな対象物の間で起きたもので、量子力学の理解を進める大きな一歩です。
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0038-x
量子もつれは、どれほど離れていても一瞬で相互作用する粒子間に作られるつながりのことです。この強力なつながりは通常私たちが理解している現実の古典力学を超えています。アインシュタインはこれを「不気味である」と言ったのも、そのような理由からでした。しかし奇妙なことに、この現象は発見以来、現代技術の基盤で有り続けています。
この日に至るまで、量子もつれは最小の粒子単位、例えば光や原子の系でのみでしか実証されていませんでした。規模を上げようとすると、安定性やつながりを破壊する環境的な妨害により難しいためです。
しかし今、研究者たちはすべてをひっくり返しました。「不気味な作用」を実際に巨視的な対象の間で現実のものとしたのです。巨視的といっても、もちろんブラックホールサイズと言う意味ではありません。研究者が用意したのは、2つの「鼓膜」のような15マイクロメートルの震える膜。そして次の段階は、この振動が2つの対象の間でテレポートしているのかどうかを調べることです。
「鼓膜」はそれぞれ15マイクロメートルで、このサイズは人の髪の毛の幅くらいの大きさです。鼓膜の大きさは原子の数兆倍。一般人にとっては大きくないですが、これまでの量子もつれを実証してきた原子サイズに比べるとかなり巨大なものです。
実験では、超伝導回路を絶対零度の-273℃近くまで下げ、そして弱いマイクロ波の場を使い、操作や測定を行いました。マイクロ波を使うことで、回路上の各鼓膜を超音波の周波数まで震わせることができます。それによりできた振動は奇妙な量子状態を形成しました。このもつれ状態が、およそ30分も継続したことは驚くべきことで、以前の努力ではマイクロ秒の維持もできませんでした。
このブレイクスルーが我々の肉眼で見える大きさで成し遂げられたことにより、この分野におけるあらゆる種類の発見の可能性が開かれました。重力と量子力学がどのように共に働くのかを解明したり、もつれ状態にある物質間での機械的な振動のテレポーテーションの可能性を調べたりできるということになるのです。
研究はフィンランドのアールト大学のキャスパー・オケロエン=コルピらによって行われ、“Nature”誌で公開されています。
via: Science Alert/ translated & text by SENPAI
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