パーサヴィアランスから見た火星降下の様子
NASAから公開動画は、探査機が火星表面に向かって急降下し、パラシュートを開いてロケットエンジンを使用して減速したあと、スカイクレーンで着陸するまでの様子を映しています。
NASAのジェット推進研究所の所長マイケル・ワトキンス氏によると、「火星着陸のようなイベントをとらえたのはこれが初めてだ」とのこと。
動画の開始は、探査機を乗せたポッドが時速2万100キロで火星の上層大気に突入してから230秒後です。
最初画面が黒いのはパラシュートに覆われているためです。展開されたパラシュートは、完全に膨らんだ状態では幅21.5メートルもあります。
その後、カメラは下方のものに切り替わり、火星大気圏へ突入する際、探査機を保護していた耐熱シールドが落下していくのが映っています。
80秒後、高度2,130mで、探査機は降下用のポッドから切り離されて、ロケットエンジンを噴射して、減速を行って降下位置を調整していきます。
最後は着陸地点でスカイクレーンを使った降下段階に移行します。
パーサヴィアランスには、地形相対ナビゲーションに基づく着陸船ビジョンシステムが装備されていて、リアルタイム画像と事前に読み込まれた火星マップとを自律的に比較して、安全な着陸エリアを決定して位置を調整しています。
このような段階を経て、探査機は安全なポイントへ着陸するのです。
動画はずっと下方を向いたカメラなのでどうなっているのかが分かりづらいですが、最後はこのような形でスカイクレーンを操作し、3本のケーブルで探査機を吊って地面におろしています。
このとき探査機は、時速3キロまで減速した状態で、安全に火星の大地へ降り立ちます。
非常に高度なシステムによって探査機パーサヴィアランスは、火星に着陸したのです。
今回公開された動画は、探査機に搭載された機器が、火星着陸時に発揮する性能を理解するための技術的に重要な資料です。
しかし、動画の目的はそれだけではありません。
プロジェクトのリードエンジニアであるデイブ・グリュエル氏は、「一般の人々も火星着陸の旅へ、一緒に連れて行きたかったんだ」と語っています。
今回の動画は見下ろした画面だけなので、実際降下がどうのように行われているのかうまくイメージできないかもしれません。
NASAは、この降下時の探査機の挙動をCGアニメーションで説明しているので、この動画も合わせて見ていくと、より興味深く降下の様子が楽しめるでしょう。
降下の際に、録音はおこなわれていませんが、降下直後にパーサヴィアランスは10秒間の火星表面の録音をしています。
これは実際に火星の地面に吹く風の音を捉えたものだそうです。よく耳を澄ますと探査機の機械音も入っています。
パーサヴィアランスは、現在予定通り順調稼働しているとのこと。
着陸地点のジェゼロクレーターは、35億年以上前湖だったと考えられている場所です。
彼のこの場所で、火星の古代に存在したかもしれない生命(微生物)の痕跡を探し出そうとしています。
さらなる続報が楽しみですね。