質量の大きな物体は動かない
回転する銀河の中心には、太陽の数百万倍以上という質量を持った超大質量ブラックホールがあります。
この超大質量ブラックホールは、銀河の中心に居座ったまま、通常は動くことがないと考えられています。
なぜなら質量とは、物体の動かしにくさを示す数字だからです。
例えばサッカーボールと同じ大きさの、重たいボーリング玉を使ってサッカーができるかと考えてみましょう。
ボーリング玉を蹴って高く打ち上げたり、スムーズに転がすことは無理だろうと、すぐ想像がつくと思います。
質量が大きいと、それは動かしにくい状態になります。
超大質量ブラックホールを動かすというのは、とんでもないパワーを必要とするため、普通動くことはないと考えられるのです。
ただ、銀河自体が宇宙を移動することはよく知られています。
私たちの住む天の川銀河も、過去に他の銀河と衝突している痕跡が見つかっています。
そのため、天文学者はブラックホールは、それが存在する銀河と同じ速度で移動しているだろうと考えられます。
もし、両者の速度が異なっていた場合、それは動くはずのない超大質量ブラックホールが銀河内を別個に動き回っていることになるからです。
しかし、理論上は、そんな超大質量ブラックホールの移動もありえるとされています。
ただ、それが観測によって明確に確認されたことは、ほとんどありません。
ところが今回の研究は、そんなまれな現象を発見したと報告しているのです。