宇宙をさまよう超大質量ブラックホールの発見
今回の研究チームは、ブラックホールの周りを回転する降着円盤を研究して、これが放つメーザー(現象としてはレーザーとまったく同じ電磁放射)を利用してブラックホールの正確な速度を測定する方法を確立しました。
そして遠方の銀河10個と、そのコアとなっている超大質量ブラックホールのそれぞれの速度を測定したのです。
この観測では、9個の銀河は中心ブラックホールと速度が一致していました。
しかし、そのうちの1つ「SDSS J043703.67 + 245606.8(以下J0437 + 2456)」と呼ばれる銀河だけ、中心の超大質量ブラックホールが異なる速度を示したのです。
この銀河は、おうし座の方角、約2億3000万光年離れた場所にあり、中心の超大質量ブラックホールは、太陽質量の約300万倍と推定されています。
観測結果によると、この銀河の中心ブラックホールは、銀河の中を時速17万7000km近い速度で移動していました。
なぜ、そのような動きを示すのか、その原因はまだ不明です。
研究者の推測では、これが2つの超大質量ブラックホールの融合した後である可能性を考えています。
融合後のブラックホールは、その反動によって大きく動くことがあるからです。
しかし、別のもっとエキサイティングな可能性もあると研究者は語ります。
それは、この超大質量ブラックホールが連星系の一部であるという可能性です。
超大質量ブラックホールの連星は、理論上は豊富に存在しているはずだと予想されていますが、実際観測で確認されたことはほとんどありません。
今回の発見はそうした、まれな発見の例である可能性があり、ペアとなったもう1つのブラックホールのメーザー放射は電波観測から隠れているのかもしれません。
なんにせよ、この異常な動きを示す超大質量ブラックホールの真相を突き止めるには、さらなる観察が必要となるだろうと、研究者は述べています。