フェルミ推定から導かれた世界のコロナウイルスの総量
世界中にいる昆虫の数は? 日本のコンビニの店舗数は?
こうした捉えどころのない数値を、いくつかの証拠となる数値と仮定をもとに予想して導く方法をフェルミ推定と呼びます。
今回、イギリス・バース大学のイエーツ博士がラジオ局「BBC Radio 4」からの依頼により、このフェルミ推定を使って計算した数が、現在世界で猛威を奮っているコロナウイルス「SARS-CoV-2」の総量でした。
では、コロナウイルスの数を推定する場合、最初の取っ掛かりとなるものはなんでしょうか?
ウイルス粒子は基本的に生物の体に取り付いていなければ生きていくことができません。
そして、ウイルスは感染すると人の体内で一気に増殖をはじめます。
「SARS-CoV-2」の数は、人に感染してから約6日間で急上昇しピークを迎えると考えられています。その後体から除去されるまで1週間以上を要します。
ピーク時の体内のウイルス数は、約1千億粒子です。
ピーク後のウイルス数は日が経つごとに減少していきますが、感染後の増殖に比べると緩やかなカーブを描いて減っていきます。
これらを平均して、感染者はだいたい1人100億のコロナウイルスを持っていると仮定しましょう。
人の体内のウイルス数がわかったので、今度は1日にどれくらいの人数がコロナウイルスに感染するかを考えてみましょう。
統計ウェブサイト「OurWorld in Data」によると、だいたい毎日50万人の人々がCovid-19検査において陽性反応を示していると報告されています。
しかし、医療者による検査可能数の限界、無症状者、あえて検査受けない人たちなどを考慮した場合、検査の陽性者数より実際の感染者はもっと多いと考えられます。
統計的・疫学的モデリングを用いて、ワシントン大学の「保健指標評価研究所(IHME)」が計算したところ、毎日Covid-19に感染する人数は約300万人と推定されています。
では、この数値を元にして、世界に存在するコロナウイルスの総粒子数を計算すると、その数はおよそ20京(2×10¹⁷)粒子となります。
これはとんでもなく大きな数字で、地球上の砂粒とほぼ同数です。
しかし、世界に存在するコロナウイルスの総体積を考える場合、1粒子の数は非常に小さいということを理解する必要があります。
では、これだけ大量にあるウイルスの総体積はどのくらいになるのでしょうか?