ムール貝は「水が汚れていると殻を閉じる」
ムール貝は、エサを与えると殻を開きますが、水中に有害な物質を検知すると、すぐに殻を閉じる習性があります。
今回のシステムは、この習性を利用して、水生生態系の衛生状態をチェックするものです。
研究チームは、ムール貝1匹につき2つの「慣性測定ユニット (IMU)」を装着しました。
IMUは、運動の角度や加速度を測定するための装置で、おもに自動車やロボットの挙動を計測・制御するために使われます。
チームはこれをムール貝の2つの貝殻に取り付け、殻の開け閉めを正確に計測できるようにしました。
IMUは配線を通して、水路に立てられたデータ収集システムに接続され、そこから無線でデータを管理者に送信します。
現在はラボ内の試作品に留まっていますが、実際に川や池に設置されれば、電力は太陽光によって供給する予定です。
同様の装置は、昨年、ポーランドでも開発されました。
実証実験では、4匹のムール貝を使って250時間以上のテストを行い、IMUを含むすべてのシステムが正常に機能することが確認されました。
IMUは貝殻の開く角度を1度未満で測定し、そのデータは無線で伝達されるので、ムール貝を見張らずとも遠隔で水質検査ができます。
研究主任のアルパー・ボーズクルト氏は「ムール貝の殻がいつ開いて、いつ閉まり、どのくらい開いているのかまで正確に分かります。
最終的には、数十匹単位のムール貝を用いることで、より精度の高いバイオモニターとして機能してくれるでしょう」と述べました。
同チームはまた、この実験を通して、ムール貝そのものの生態を詳しく理解することも目的としています。
今、ムール貝を含むイガイ科の多くの種が減少の一途をたどっており、それを食い止めるためにも、貝が有害物質にどのように反応し、何をきっかけに殻を閉じるのかを知る必要があるでしょう。
ボーズクルト氏は「環境モニターとしての有効性を探ることに加えて、この技術がイガイについて学ぶ機会となることを期待している」と話しています。