脳内のアルコール代謝
今回の研究チームは、3つの人間の脳サンプル、11匹のマウスを使ってALDH2が発現している場所を調査しました。
するとALDH2は、小脳のアストロサイトと呼ばれる細胞でも発現していることがわかったのです。
小脳はアルコール運動障害に関与する主要な脳領域であることがわかっています。
これまでは、肝臓でアセトアルデヒドが分解されたあと、酢酸が脳に運ばれることで影響を受けるのだと考えられていました。
しかし、今回の研究では、マウスの脳からALDH2を除去した状態で、アルコール摂取をさせると、運動障害が起こらないことを発見したのです。
また、マウスの肝臓からALDH2を除去しても、脳内の酢酸レベルが変化しないことも確認されました。
つまり飲酒によって引き起こされる運動障害の原因物質である「酢酸」は、肝臓ではなく、脳内で直接生成されていた可能性が高いのです。
この場合、アルコール代謝は肝臓だけでなく、脳自体もおこなっていると考えることができます。
この事実は、アルコール依存症などの治療に新しい方法を提供する可能性があるとして期待されています。
ただ、現在はマウス実験によるものなので、人間に適用した場合も、同様の反応が見られるかどうかは、慎重に研究を進めていく必要があるようです。
人類が最初にアルコールを飲んだのは8000年以上前だと言われていますが、それが体に起こす作用について、未だに新しい発見があるというのは、なんとも興味深い話です。