食事量とストレスの関連を示す 意外な実験結果
実験の結果、バーを停止させるというメインタスクは、事前のストレスの有無に関わらず被験者のパフォーマンスが変化しませんでした。
ただ、拒食症の患者は、ストレス後にこのタスクを行う際、前頭前野の活動が低下しているのが確認されました。
これは拒食による栄養不足などが、余計な生理的ストレスを発生させたためではないかと考えられます。
一方、過食症の患者は、ストレス後は前頭前野の活動が逆に増加しました。しかし過食症患者は、一様にこのメインタスクのパフォーマンスが他の被験者たちより低いことが確認されました。
また、提供されたビュッフェの食事量は、1日目と2日目で、どちらの場合も拒食症、過食症の患者は食事量に変化がなく、健康な被験者たちより少なめでした。
これは非常に意外な結果です。
これまでの理論では、過食症の原因はストレスによる抑制能力の低下が原因であると言われていました。
しかし、実験の結果は、ストレスによる脳活動の変化を捉えていたにもかかわらず、食事量に影響を与えていなかったのです。
研究チームの1人、英国ケンブリッジ大学精神科のポール・フレッチャー教授は、今回の実験結果について、「ストレスと過食症の関係は、現在考えられているよりも非常に複雑である」と述べています。
過食症や拒食症は、極端な食事行動を取るだけの、単純な病気のように受けとられがちです。
しかしそれは、私たちの心理状態と、体の満腹や空腹、自己制御と意思決定など複雑なメカニズムが絡んだ難しい問題であることが明らかになりました。
研究者たちは、はるかに統合されたアプローチで研究を進めることで、こうした病気に苦しむ人々を救いたいと語っています。