重水の味を巡る90年におよぶ戦いの歴史

水はH2Oという化学式で表されるように、水は水素と酸素からできています。
重水もまた同じ構造をとりますが、水素の原子核に若干の違いがあります。
上の図の通り、普通の水素の核が陽子1個だけかなのに対して、重水素の原子核には中性子が1個多く含まれています。
そのため重水素は普通の水素の2倍の重さがあり、重水は水と比べて密度が大きく「重水の氷」は水に沈んでいきます。
ここまでが重水の基本情報です。
しかし味に関しては大きく意見が2つにわかれていました。
1つはノーベル化学賞を受賞したハロルド・ユーリーとその同僚が1935年に行った研究を鵜吞みにした常識派たちの「構成する元素が同じなら味も同じ」という意見です。
そしてもう1つは実証派…自分でなめてみた人々による「重水は甘い」とする意見です。
この2つの意見の衝突は重水素が発見された1931年から延々と続いており、決着はついていませんでした。
当時の重水は科学の粋を集めた非常に高価な物質であり、原子爆弾の製造にも使われる国家の「戦略物資」だったため、個人でコッソリなめるならともかく、味を確かめる大規模実験などできなかったのです。
しかし時は流れ、重水を誰もが入手できるようになってきました。
そこで今回、イスラエルのヘブライ大学の研究者たちは、複数の人間のボランティア、およびマウスに、実際に重水をなめてもらうことにしました。
加えて、人間の甘味を感じる受容体が重水に反応するかを確かも細胞レベルで調査。
長年の論争に終止符を打とうと試みます。
はたして本当に重水は甘かったのでしょうか?





























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