クジラの脳には3つの熱生成システムが組み込まれている
研究チームは、クジラやイルカの脳に3つの熱生成システムがあることを発見。
1つ目は、脳の神経細胞の90%に含まれる「脱共役タンパク質」です。
これは細胞内のエネルギー生成を非効率的にし、ATP(エネルギーの放出・貯蔵を行う物質)を生産する代わりに熱を生成します。
つまりクジラやイルカの大きい脳には、熱生成に特化した細胞がたくさんあるのです。
2つ目は、グリア細胞(神経機能をサポートする細胞)の30~70%に含まれる脱共役タンパク質です。
通常、グリア細胞には脱共役タンパク質は含まれません。しかしクジラやイルカの脳には特別に多く含まれているのです。
3つ目は、高密度な神経終末です。
神経終末には脱共役タンパク質の濃度と活性を制御する役割がありますが、クジラとイルカの場合は、近縁種と比較して30%も密度が高くなっていると分かっています。
このように、クジラやイルカの大きな脳は、3つの特徴によって知能ではなく熱生成に特化していました。
彼らの脳は、冷たい海中で生活するための特注製だったのです。
研究チームによると、この新しい発見はクジラやイルカの保護に繋がるとのこと。
今後、地球温暖化による海洋温度の上昇が、クジラやイルカにどんな影響を与えるのか解明するのに役立っていくでしょう。