宇宙服の歴史
宇宙服という概念はそもそもどこからはじまるのでしょう?
これはH・G・ウェルズと並ぶ、初期のSF作家ギャレット・P・サービスの小説「エジソンの火星征服」から広まったといわれています。
「エジソンの火星征服」は、ウェルズの「宇宙戦争」の続編として書かれたもので、発明王トーマス・エジソンが宇宙船を開発して、火星に乗り込むというストーリーです。
この作品で登場した宇宙服という概念は、その後1930年代に漫画化された際に、さらに深く考察されることになります。
本物の宇宙服の歴史は、高高度航空機のパイロットを守る「全与圧服」の設計から始まります。
航空機エンジンが進歩を遂げると、パイロットに危険をもたらす高度まで飛行できるようになりました。
4万3000フィートの上空では、気温は-54℃まで下がり、肺は意識を維持する十分な酸素を取り込むこともできなくなります。
1931年、最初の全与圧服「CH-1」が、ソ連の技術者シアン・ダウンズ(Ciann Downes)によって設計されます。
これはヘルメットを備えたシンプルな与圧服で、関節を曲げるための機構が存在していなかったため、加圧時に腕を曲げる動作が非常に困難だったといいます。
実用的な与圧服は、1934年米国のタイヤメーカーBFグッドリッチ社が飛行士ワイリー・ポストの世界高度記録突破を支援した際に開発しました。
この与圧服を開発したのは、BFグッドリッチの技術者ラッセル・コリーでした。
彼は後にNASAにも勤め、世界で2番目(米国では初)の宇宙飛行士アラン・シェパードを宇宙へ送るマーキュリー計画にも関わっています。
初期の与圧服は、1層目の長い下着と空気圧を保つゴム製の中間層、パラシュート生地を使った外層という3層構造になっていました。
最終的に飛行士のポストは、こうした与圧服を使って、高度4万7000フィートまで到達したといいます。
現代に似た雰囲気の本格的な与圧服を開発したのは、1946年、米軍が開発した「ヘンリースーツ」です。
これはスーツのヘルメットと手袋を取り付けるための首や手首に金属製ループが備わっていて、完全に加圧された人の形をした宇宙服でした。
世界で初めて宇宙で使用された宇宙服は、当然、人類で初めて宇宙へいったソ連のユーリイ・ガガーリンが着用した「SK-1宇宙服」です。
SKというシリーズ名は、ロシア語の「СкафандрКосмический(宇宙用ダイビングスーツ)」の頭文字から来ています。
この宇宙服の重量は20kgでした。
そしてついに、人類は宇宙船の外の過酷な宇宙の環境でも活動することを目指します。
これを実現させたのは、50年前月面に着陸したときニール・アームストロングをはじめ、アポロ計画の宇宙飛行士たちが着用していた「xEMU宇宙服」です。