見分けのつかない光子を虚数情報で判別する
虚数「i」を観測するためには何をしたらいいか?
鍵となったのは、近年になって導入された、虚数を実数と同じく、資源として活用するという虚数の資源理論です。
この理論を使うことで、量子情報における虚数の役割を研究することが可能になります。
実際の実験にあたっては、量子的にもつれ状態にある光子ペアが選ばれました。
量子もつれの状態にある光子のペアは、片方の状態が決定すると、もう片方の状態が自動的に決定するという性質があります。
これまでの研究では、観測されて状態が確認されるのは「実数」部分のみでした。
光子は粒子と波という2つの性質を併せ持つために、正確な光子の状態を表記するのには実数と虚数を組み合わせた情報が必要です。
そこで今回、研究者たちは、レーザーとクリスタルを組み合わせた装置で、実数部分が同じながら、虚数部分にのみ違いがある、もつれ状態にある光子ペア(状態Aと状態B)を作り出しました。
これら光子ペアを区別するためには、絶対に虚数部分の情報が必要です。
そしてペアの一方の光子を第三者に送り、情報の読み込みを行いました。
結果として、第三者は虚数部分の情報に応じて、送られてきた光子の状態および、もつれ状態にある未発進の光子の状態も識別することに成功します。
この結果は、量子の虚数部分の読み取りが可能であるだけでなく、情報資源として活用可能であることを示します。