生命の誕生に不向きだった地球初期の大気
マグマは鉄分が豊富で、岩石中の鉄の酸化状態(錆の化学組成)から、当時利用できた酸素量を知ることができます。
実験では、こうした鉄分と酸素の結合比率に着目して、大気組成の分析を行いました。
鉄と酸素の結合比率が2:3に近い場合、大気中には酸素が豊富で、また窒素や二酸化炭素が多く含まれていたとわかります。
もしこの鉄と酸素の比率が1:1に近い場合、大気中に酸素は少なく、大気組成はメタンやアンモニアが多く含まれていたことになります。
過去の研究では、生命起源の一般的な理論から、初期の地球には水とメタン、アンモニアが豊富だったと予想されていました。
このような環境だと、生命のもととなるアミノ酸が形成されやすいのです。
しかし、今回の結果は、この理論に対抗するものとなりました。
新しい研究から示された結果は、地球初期の大気が、現在の金星や火星に近い、二酸化炭素や窒素に富んでいたことを示していて、アミノ酸の形成には不向きな状態だったのです。
これは生命起源について謎を生みましたが、代わりに地球が金星や火星などの隣人と異なる理由を説明してくれます。
地球では、マグマから発生した大気が豊富な液体の水を形成し、海が生まれました。これが大量の二酸化炭素を吸収してくれました。
地球は太陽との適切な距離によって、海が干上がることはなかったため、液体の状態で保持することができ二酸化炭素の低下を実現できたのです。
しかし金星は暑すぎ、火星は寒すぎたため、このプロセスを維持することができませんでした。
研究は新しい謎を残しましたが、初期の地球の大気状態、そして隣り合う惑星と地球の大気が分岐していった理由を明らかにしてくれています。
研究者は今後、この研究手法をアップデートさせていき、別の太陽系の大気についても研究していきたいと語っています。