ネコは「錯覚」を認識できることが判明
研究チームは、コロナ禍を利用した市民協力型の科学研究として実験をスタートしました。
本研究は、閉鎖空間を好むネコの習性を利用して、視覚的な錯覚をどのように認識するかを調べるものです。
チームは、愛情を込めて、このプロジェクト名を「If I fits, I sits(フィットするなら、シットする)」と名付けています。
実験はプロジェクトに参加したネコの飼い主が各自宅で実施し、撮影された映像を研究チームが分析する方法を取りました。
飼い主たちには、自宅の床に、四角形のテープ・四角形に見えないテープ・カニッツァ錯視の四角形の3パターンを貼り付けてもらいます。
カニッツァ錯視とは、1955年にイタリアの心理学者ガエタノ・カニッツァにより考案され、パックマン型の図形を配置することで、三角形や四角形が錯覚的に浮かび上がるというもの。
この錯覚は、脳が先入観にもとづいて足りない視覚情報を補うことで生じます。
そして、ネコが3つのどれに居座るかを観察し、飼い主には余計な情報を与えないよう、サングラスの着用や表情、発話の禁止をお願いしました。
プロジェクトには約500名の飼い主が参加しましたが、正しく実験が行われたのはわずか30件でした。
しかし、その30件の映像を見た結果、ネコは非常に高い確率で「四角形のテープ」と「カニッツァ錯視の四角形」に居座ることが判明したのです。
So pleased to announce that my paper, “If I Fits I Sits: A Citizen Science Investigation into Illusory Contour Susceptibility in Domestic Cats (Felis silvestris catus) has just been published in AABS! #IfIFitsISits #CatSquare #CitizenScience #CommunityScience pic.twitter.com/AXbDttnOGC
— Gabriella Smith M.A. (@Explanimals) May 4, 2021
研究チームは、この結果について「ネコは錯覚として浮かび上がる輪郭を認識でき、通常の四角形と同じように視覚的に反応できることが示された」と述べています。
また「今回の結果はサンプル数が少ないため限界がある」としながらも、「ネコが錯覚に反応できることを示した研究はこれが初めて」と続けます。
一方で、なぜネコが自分の体がフィットするスペースに入りたがるのかは、科学的に解明されていません。
有力な説として、2003年の研究で、「ネコは体が囲われている空間を居心地がいいと感じ、ストレスが減る」と指摘されています。
それから、同じネコ科のライオンやトラも狭い空間に収まることを好みます。
この習性は、ネコ科動物の進化に秘密がありそうです。
ネコは自分が慣れ親しんだ空間ほど素直に行動してくれるので、ネコを飼っている方は実際に家で試してみると良いかもしれません。