エントロピーってなに?
エネルギーとは、この世界で何らかの仕事ができる力のことを意味しています。
この世界のあらゆるものは、エネルギーを消費して活動します。
それは生物も機械も同様です。
そしてエネルギーは消費されると、どんどん無価値な熱に変わっていきます。
ガスや電気を消費して淹れた熱いコーヒーも、時間が経つと回りの低い温度と混ざり合ってどんどん冷めてしまいます。
熱湯の状態なら、蒸気機関を動かしたり、発電所のタービンを回したりするようにさまざまな仕事ができますが、ぬるくなってしまった水は使いみちがありません。
このようにさまざまな仕事ができるエネルギーが、利用しづらい無価値な熱に変わってしまうことを、熱力学ではエントロピーの増大と表現しています。
エントロピーは日本語だと「煩雑さ」という言葉で表現されます。
煩雑とは、散らかっていくというイメージです。
たとえば、きれいに整頓された部屋でも、何日か生活していると、どんどん散らかって汚れていき、放っておいても元の整頓された部屋に戻ることはありません。
きれいに整頓された部屋が利用できるエネルギーの状態、散らかった部屋が無価値な熱の状態と考えると、部屋がどんどん散らかるのもエントロピーが増大するせいだといえるのです。
このように、世界は常に時間の経過とともにエントロピーが増大して、利用しづらい価値のないものに変わっています。
時間の流れに逆らってエントロピーが減少することはありません。
バケツから放たれた水が散らばっていくことはあっても、逆に集まってバケツの中に整然と収まることはありえません。
もし、そんな映像があったら、私たちはすぐさまそれが逆再生された動画なんだと理解できます。
そのため、エントロピーの増大は、時間の流れる方向を指し示す前提条件だと考えられてきました。
現在、人類は1億年に1秒しかズレないという精度で、時を刻む技術を持っています。
しかし、時を刻むためのエントロピーの生成については、これまで調査されたことがありませんでした。
そこで、今回の研究は、初めて時を刻むという行為が支払っているコスト(エントロピー)について調べてみたのです。