病気のとき、たくさん眠らなければいけない理由
まず、結論から言ってしまうと、ファイザー製ワクチンを使用することで悪夢を見るという副作用はありません。
今後ワクチン接種を控えている人も、この点について心配する必要はありません。
では、ワクチン副作用に関して、奇妙な夢の報告があがるのはなんなのでしょうか?
この疑問に睡眠の専門家チーム「Tatch」の神経科学者チェルシー・ロールシャイブ博士は次のように答えています。
「ワクチン接種後の一般的な変化の1つとして、睡眠時間の増減や入眠や睡眠維持について変化があり、これは夢に変化をもたらす可能性があります」
つまり、一見おかなしな主張にも思える、ワクチン接種後に悪夢を見るという報告は、医学的な観点からすると驚くものではないというのです。
では、ワクチン接種後に睡眠が変化するというのは、どういうことなのでしょう?
これは私たちが病気になると、基本的にたくさん眠る必要があるという事実と関わりがあります。
睡眠は免疫システムの強化に役立っており、T細胞の効率的な作成を助けます。
T細胞とは白血球の1種であり、これが体中を循環して、細胞がウイルスに感染している兆候を探しています。
そして、T細胞は標的を発見すると粘着性タンパク質(インテグリン)を活性化させて、感染細胞に付着してウイルスもろとも感染細胞を破壊します。
このため、ワクチンに関する研究でも、ワクチン接種後によく眠った人は、眠らなかった人よりも強い抗体反応を示すということが報告されています。
また睡眠は、抗体生産とも関係しています。
抗体とは免疫システムが作るタンパク質のことで、ウイルスや細菌のタンパク質(抗原)を識別して結合します。
抗体が抗原と結合すると、免疫システムは病原体への攻撃を開始します。
この抗体の生産も、やはり睡眠時間が減ると阻害されてしまい、病原体に対する反応性を低下させることがわかっています。
つまり睡眠不足だと、T細胞や抗体の活動や生産が低下してしまい、体内に侵入した病原体は細胞を攻撃しやすくなってしまうのです。
このため、人間の体は病気になると、より多くの睡眠時間を必要とするようになるのです。
このことが、ワクチン接種と睡眠の質を変化させることに結びついています。