復活だけでなく、単為生殖で増殖
研究チームは、永久凍土の掘削調査で、シベリア北東部にあるアラゼヤ川の地下3.5メートルからコアサンプルを採取。
サンプルが現代の微生物に汚染されていないことを確かめた上で、炭素年代測定をし、凍土が約2万3960~2万4485年前のものであることを特定しました。
さらに凍土を分析した結果、完全に凍結した多細胞生物の「ヒルガタワムシ」が見つかったのです。
ヒルガタワムシは、輪形動物(ワムシ類)の一種であり、体長0.3〜1ミリほどで、世界中の淡水系に生息しています。
凍結・脱水状態でも生存でき、これまでの研究では、すべての生物学的機能が停止した状態(クリプトビオシス)で10年ほど生きられることが分かっていました。
こちらはエサを食べるヒルガタワムシの様子。
そこでチームは、培地を敷いたペトリ皿にサンプルを置き、ゆっくり時間をかけて解凍。
その結果、一部のヒルガタワムシが休眠状態から回復し、活発に動き始めたのです。
それだけでなく、復活した個体は、受精を必要としない単為生殖という手法で、次々とクローン増殖しています。
その後、チームは復活したヒルガタワムシの中から144個体を無作為に選び、マイナス15℃で再び1週間凍結させました。
それを現代のワムシ類の蘇生個体と比較してみると、興味深いことに、古代のワムシは、現代ワムシに比べて、凍結耐性が大幅に向上しているわけではなかったのです。
研究主任のスタス・マリャービン氏は、この結果について「多細胞動物が凍結中の細胞損傷を回避し、クリプトビオシスに数万年も耐えられることを現時点で最も確実に証明するもの」と説明します。
チームの分析によると、凍結プロセスが比較的ゆっくりであれば、ワムシ類の細胞は、氷の結晶が形成されても最小限のダメージで生存できるという。
ただし、何万年も生き延びられる理由は分かっていません。
研究チームは今後、蘇生メカニズムの解明に向けて、さらに調査を進めていく予定です。
マリャービン氏は「その結果次第では、ヒトを含む哺乳動物のように、より複雑な生物の細胞を保護する方法が見つかるかもしれない」と述べています。