地球を発見できる異星文明
こうした調査によって、1万年間に地球をトランジット法観測できる星系は2,034個あることがわかりました。
このうち、太陽から100光年以内にある星系は117個で、さらにそのうちの75個の星系は、地球で商業ラジオ放送が始まった約100年前から、地球トランジットゾーンに存在しています。
つまり、これら75の星系では、地球の存在を発見して、地球のラジオ放送が宇宙にもらしたわずかな電波を受信できている可能性があるのです。
また、トランジット法では、光を遮った惑星の持つ大気の組成などを分析することができます。
もし、私たちと同レベルの文明が、こうした星系にあった場合、太陽光のスペクトル分析で、地球大気中にある生命体の化学的痕跡を発見することも可能だと考えられます。
今回分析された地球を発見できそうな星系をいくつか紹介していきましょう。
1つはおとめ座にある赤色矮星を母性とする「ロス128星系(Ross 128 system)」です。
赤色矮星を母性としたこのロス128は、地球から約11光年という距離にあり、地球の約1.8倍という非常に地球に近いサイズの惑星が存在します。
この太陽系外惑星からは、約3057年前から2158年間にわたって地球が太陽を横切る様子が観測できたとわかりました。
ただ、約900年前から地球のトランジット法観測が可能な位置からはずれてしまっていて、現在は地球を観測することができません。
距離が非常に近いことから、地球よりもすこし早熟な文明がこの星系にあったなら、地球生命の存在に気づいていた可能性があるでしょう。
地球から約45光年の距離にあるのは、トラピスト1星系(Trappist-1 system)です。
この整形には地球サイズの惑星が7つあり、うち4つは温暖なハピタブルゾーン(生命居住可能領域)にあります。
現在、この星系から地球をトランジット法観測することはできませんが、1642年後から2371年間地球を観測するのに最良の位置に移動するとわかっています。
カルテネッガー教授は、今回の分析から、「私たちにもっとも近い惑星でも、1つの星系が地球を観測するために有利な位置にいる期間は1000年程度だった」と述べています。
逆に言うなら、異星文明が地球を興味深い惑星だと認識できる制限時間は、1000年程度の間ということになるでしょう。
今後、地球ではジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって、トランジット法観測から、大気の特徴を明らかにし、最終的にその星の生命の痕跡を調査できるようになるといいます。
また、「ブレイクスル・スターショット(Breakthrough Starshot)」という、レーザー照射で推進する切手サイズの小型宇宙船、数千個をケンタウルス座α星に送り込むというプロジェクトも進行中です。
もし、私たちの惑星を発見する文明があった場合、似たようなことを計画しているかもしれません。
この研究は、私たちが宇宙の隣人を探しているとき、彼らもまた私たちを見つけることができるかもしれない可能性を示す、興味深い思考実験なのです。