壁の向こう側をリアルタイムに画像化
では無線信号の反応は実際どのようになったのでしょうか?
これは実験の様子を映した動画です。無響室を使って、部屋の中を人にあるきまわってもらっています。
左側が実験装置、右側が画像化された無線信号の反応です。
最初は、壁などを設置せずに実験を行っています。
ここでは右側の画像に、無線信号を反射して動き回る人の位置がはっきりと確認できています。
では乾式壁をおいて、視界を遮った場合どうなるでしょうか?
こちらでは、12台の無線信号送信機との間を、乾式壁をおいて仕切っています。
目隠しされた状態ですが、こちらでも問題なく、移動する人の位置を画像化して検出できているのがわかります。
まだ実験の段階なので、画像は曖昧な表現ですが、それでもはっきりと人のいる位置を特定できます。
NISTでこのシステムの開発を担当した物理学者のファビオ・ダ・シルバ(Fabio da Silva)氏は、「このシステムは1つの画像フレームを作るのに、わずか数マイクロ秒のデータで十分だ」と語ります。
それは非常に応答速度の早いレーダーシステムということで、ほぼ光の速さでサンプリングが可能です。
この応答速度の早さは、壁を透過するという特性だけでなく、非常に高速で移動する物体の位置をリアルタイムに検出する際にも役立つのだといいます。
ダ・シルバ氏によると「このシステムは、秒速10km以上で飛んでいるミリサイズやスペースデブリなどの高速移動体を、離れた場所から追跡することができる」とのこと。
また将来的には、量子もつれを使用して感度や画像を改善することができるとも説明しています。
この技術は、火災現場などの壁や煙で見通しが効かない状況での人命救助に活躍が期待できる他、ダ・シルバ氏が語るように宇宙開発において危険となる、高速で移動するスペースデブリの位置を捉えるために役立つと考えられています。