実験の概要図。手前に並ぶ円筒から電波を出し板壁の向こうの様子を画像化する
実験の概要図。手前に並ぶ円筒から電波を出し板壁の向こうの様子を画像化する / Credit:NIST,NIST Method Uses Radio Signals to Image Hidden and Speeding Objects(2021)
physics

無線信号で壁の向こうを「透視」できる新技術が開発される

2021.06.29 Tuesday

壁の向こう側を透視するような超能力を、「クレアボイアンス(clairvoyance)」といいますが、これは科学の力で実現可能でしょうか?

米国国立標準技術研究所(NIST)の新しい研究は、無線信号を利用して壁に隔てられた向こう側を透視する方法を開発したと報告しています。

この方法は非常に応答が早いため、リアルタイムに壁の向こう側を画像化できるだけでなく、小さく高速で移動するスペースデブリなどの追跡にも役立つとのこと。

研究の詳細は、オープンアクセスジャーナル『Nature Communications』に6月25日付で掲載されています。

 

 

NIST Method Uses Radio Signals to Image Hidden and Speeding Objects(NIST) https://docs.google.com/document/d/1QTVD48ky5cRorX0_W08HvVkIHoombM_dxX2UhbXpaqU/edit
Continuous-capture microwave imaging https://www.nature.com/articles/s41467-021-24219-0

マルチサイトレーダーで対象の位置を割り出す

携帯電話が屋内でも使えるように、無線信号は基本的にコンクリート、乾式壁、木、ガラスなどほとんどすべてのものを通過します

これをレーダーのように使用して、壁の向こう側にある物体を発見しようというのが今回の研究です。

この方法は「m-Widar (microwave image detection, analysis and ranging)」と名付けらています。

日本語にすると「マイクロ波による画像検出、分析、および測距」という意味です。

そういわれても、あまりイメージがわきませんが、やっていることはマルチサイトレーダー(multisite radar)のコンセプトと同じです。

マルチサイトレーダーは、複数の電磁パルスを発射して、ターゲットに当たったエコーを受信し、信号の往復時間を使って三角測量法で対象の位置を特定する技術です。

マルチサイトレーダーは複数の電磁パルスの反射時間と三角測量法を利用して対象の位置を割り出す
マルチサイトレーダーは複数の電磁パルスの反射時間と三角測量法を利用して対象の位置を割り出す / Credit:canva,ナゾロジー編集部

今回のシステムは、これを無線信号を使って行ったというものです。

実験装置は下の画像のようなもので、手前に12個の円筒が並んでいますが、これが無線信号の発信源です。そしてその中央に受信機が設置されています。

実験装置の概要
実験装置の概要 / Credit:NIST,Fabio C. S. da Silva et al.,Nature Communications(2021)

こうした装置で、マルチサイトレーダーと同じようにして壁の向こう側にいる人の反応を探ったのです。

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