世界最高のデジカメ「ダークエネルギーカメラ」が捉えた新しい彗星
今回新たな彗星を発見したのは、米ペンシルベニア大学の、ペドロ・バーナーディネリ(Pedro Bernardinelli )とゲイリー・バーンスタイン(Gary Bernstein)という2人の天文学者です。
彗星の正式名は「C/2014 UN271」で、通称は2人の発見者の名前をとり「Bernardinelli-Bernstein(バーナーディネリ・バーンスタイン)彗星」と呼ばれています。
名前からわかるように最初に発見されたのは2014年です。
ただ発見当初はそれがどんな動きをする何の天体かはっきりわからないので、正式な登録までにはタイムラグがあります。
バーナーディネリ・バーンスタイン彗星は、複数の天文台の観測から、長周期彗星としての活動が報告されたので、2021年6月24日に正式に新たな彗星「C/2014 UN271」として登録されたのです。
新たな彗星の姿を撮影したのは、2013年から2019年にかけて広域の夜空を撮影している世界最高峰のデジタルカメラ「570メガピクセルダークエネルギーカメラ(DECam)」です。
このカメラは、ダークエネルギーサーベイというダークエネルギーの調査を行う国際的巨大プロジェクトで使用されていて、5000平方度の夜空を観測しています。
平方度というのは夜空の広さを表す単位で、たとえば北斗七星を尻尾にした「おおぐま座」の大きさは1280平方度です。
ダークエネルギーサーベイは、このおおぐま座の約4倍強の広い夜空を観測し、3億個もの銀河をマッピングしています。
ダークエネルギーというのは、宇宙を加速膨張させていると考えられる未知のエネルギーです。
名前が暗黒物質(ダークマター)と似ていますが、まったく別のものです。
宇宙で私たちにわかっている既知の物質(バリオン)は、だいたい全体の4%程度と考えられていて、他はダークマターが23%、残りの73%近くがダークエネルギーだと考えられています。
この壮大な観測では、遠くの銀河以外にも、この広い調査領域を通過する太陽系外縁天体(TNO)や彗星などを多数観測しています。
TNOは海王星の軌道を超えて太陽系を回る天体の総称です。冥王星などはこれに含まれます。
DESのデータには、約160億個もの個別の天体が映っていましたが、これを高度な識別・追跡アルゴリズムによって分析したところ、800個以上がTNOであるとわかりました。
さらにこれを分析したところ、そのうち32個はすべて同じ1つの天体であると識別されたのです。
それが、今回発見された彗星「C/2014 UN271」だったのです。