史上最大の彗星
今回発見された「バーナーディネリ・バーンスタイン彗星」のもっとも驚くべき点は、それが100~200km近いサイズを持つと予想されていることです。
この大きさの推定は、太陽光をどれだけ反射しているかという分析に基づいています。
典型的な彗星のサイズは、だいたい数km~数十kmとされています。
これまで発見された中で最大の彗星は、1995年に発見されたヘール・ボップ彗星ですが、その直径は60kmほどです。
それを考えると、今回の「バーナーディネリ・バーンスタイン彗星」がいかに規格外の大きさをした彗星がよくわかります。
彗星は、氷の天体で太陽に近づくと蒸発して、コマや尾と呼ばれる明るくキラキラしたガスを伸ばします。
彗星も太陽系の天体で、太陽の周りを回っています。
ただ、彼らは非常に太陽から離れた太陽系のはるか外縁からやってくるので、軌道は細長く、軌道周期は非常に長くなります。
その中でも公転周期が200年未満のものは短周期彗星と呼ばれ、200年以上のもは長周期彗星と呼ばれます。
太陽系の周りには、2つの彗星の供給源(故郷となる領域)があります。
それが「エッジワース・カイパーベルト」と「オールトの雲」です。
「バーナーディネリ・バーンスタイン彗星」はオールトの雲からやってくる長周期彗星で、その公転周期は300万年を超えると推定されています。
それは、もしこの彗星が以前に地球の近くまで来たことがあったとしても、そのときはまだ人類自体が誕生していなかったことを意味します。
オールトの雲にある彗星は、太陽系が形成されて間もない頃に吹き飛ばされた氷や塵の破片が集まったものです。
研究者たちは、今回の彗星がこれまでオールトの雲から検出された天体の中で最大のものになるだろうと話しています。
彗星は2021年6月時点で、太陽から20au(天文単位,20auは地球-太陽間の20倍、約30億km)の距離にあり、20等級で輝いています。
オールトの雲からやってくる彗星は、太陽系平面に対して立体的な軌道をとりますが、「バーナーディネリ・バーンスタイン彗星」は太陽系平面に垂直な軌道を持っていて、2031年に太陽に最も接近すると考えれています。
このとき彗星は約11auの距離まで太陽に接近すると予想されていますが、これは土星の軌道よりも外側のため、地球からこの彗星を肉眼で見ることは難しいだろうと考えられます。
ヘール・ボップ彗星は1997年に地上から肉眼でも見ることができましたが、その5倍以上あると推定される「バーナーディネリ・バーンスタイン彗星」は、残念ながら地上からその姿を見ることはできなそうです。
しかし、そんな巨大な彗星が、あまりに地球に近づくといわれるのも不安なので、それはそれでいいことなのかもしれませんね。