2つのブラックホールの合体を重力波で観測した
長々と語ってきましたが、今回の研究は、こうした出来事を、重力波望遠鏡を使って観測したのです。
観測されたのは「GW150914」というブラックホールで、これは太陽質量の29倍と36倍の2つのブラックホールが合体して誕生したものでした。
ブラックホールの合体という劇的な事象は、見えない時空の振動を引き起こします。
重力波観測は、2つの巨大な重力を持つ天体が合わさったときに発生する津波のような時空のゆらぎを観測するものです。
それははるか遠くの地球にもさざ波のようにして届きます。
そして、この重力波観測では、合体前の個別のブラックホールの重力波と合体したブラックホールの重力波を分けて詳細に分析することが可能です。
研究はこれをうまく選り分けで、それぞれのブラックホールの質量や回転速度(角運動量)を求めることに成功しました。
これらの情報を元に、研究チームは合体前のそれぞれのブラックホールの事象の地平面の表面積と、合体後の表面積を計算することができたのです。
結果、合体後のブラックホールの表面積は、合体前のブラックホールの表面積の和よりも大きいことが明らかとなったのです。
これはホーキングの面積定理と一致していました。
この観測の信頼性は最大97%であると、研究者は述べていて非常に長い時をかけて、ホーキング氏とベッケンシュタイン氏の予想が観測によって確認されたことになります。
ブラックホールの熱力学という難解な理論について、最初の証拠が提示されたのです。
これは物理学の大きな進展でしょう。