石油会社が調査した地質データ
恐竜たちの生きた時代「中生代」を終わらせた原因は、巨大な小惑星「チクシュルーブ衝突体」の地球衝突だったと考えられています。
これは、現代のメキシコ・ユカタン半島にあるチクシュルーブ村から数kmの地点に落下し、直径177km以上にも及ぶ巨大クレーターを生み出しました。
ここ数年の間、この小惑星の数多くの痕跡が発見されて、世界を包み込むような砂塵の発生や、衝突地点から1500kmも離れた場所に山火事を発生させたことなど、凄まじい余波の詳細が報告されています。
そして2019年には、この衝突が起きてから数時間後に発生した津波の痕跡が発見されたのです。
今回の研究は、この発見について分析を行い報告しています。
その痕跡は、現在のルイジアナ州中央部の地下1500メートルにあった頁岩(けつがん)に保存されていました。
頁岩というのは、あまり馴染みのない岩かもしれませんが、これは泥の堆積によってできた薄く脆い岩盤で、英語では「shale:シェール」と呼ばれています。
シェールという名前ならぴんと来た人もいるかもしれません。
頁岩は有機物を含んでいた場合、そこから石油を取り出すことができ、これはシェールオイルと呼ばれています。
大手石油会社は、こうした石油の取り出せる層を探し出すため、地震波によるエコーを使って地中の構造を可視化した膨大なデータを持っています。
今回の研究は、ルイジアナ大学ラファイエット校の地球物理学者であるゲイリー・キンスランド(Gary Kinsland)氏が、10年以上前に米エネルギー会社デボン・エナジーから提供されたデータを分析したものです。
キンスランド氏の研究チームは、ルイジアナ中央部の膨大なデータから、特に地下約1500メートルの層を分析しました。
この深さは、ちょうどチクシュルーブ衝突体が地球に衝突した時期と関連している層です。
そして、そこからある痕跡を発見したのです。
それは、衝突体が発生させた巨大津波の痕跡でした。