原発事故はなぜ厄介なのか?
発電所には、火力、水力、風力、原子力とさまざまな方法がありますが、すべてやっていることは同じで、タービンを回して発電しています。
磁石が導線の周りで動くと電気が生まれるというのは、小学校の理科でも教わることですが、発電所は結局この原理を利用しています。
人力自転車発電も原子力発電も、そういう意味では規模が違うだけでやっていることは同じです。
水力や風力は、自然の力でそのままタービンを回しているのでわかりやすいですが、では火力や原子力はどうやってタービンを回しているのでしょう?
それは、高熱を発生させてお湯を沸かし、その水蒸気でタービンを回しているのです。
ある意味蒸気機関ですね。
原子力発電は、原子炉圧力容器に入っている個体のウラン燃料棒が核分裂をおこして周りの水を熱して水蒸気を作ります。
また、この水が冷却材として燃料を冷やす役割も担っています。
福島原発の事故では、電源がすべて失われたことで、この冷却材の水が正しく循環せず、どんどん蒸発してしまい、燃料が露出して高温になってしまいました。
これはその後、建屋の水素爆発やメルトダウンという事故につながってしまいました。
原子力発電に危険が伴うのは、事故が起きて電源が失われてしまった場合、この燃料の冷却や核分裂反応を完全に制御することが難しくなるためです。
加熱した燃料が溶け落ちて容器を突き破り、外に出てきてしまうことをメルトダウンと呼びます。
その後も燃料は高熱を保ち続けるため、なんとかして冷やさなければ事態を収めることはできません。
福島原発では露出した燃料を未だに水で冷やし続けているため、大量の汚染水をどうするかが問題になっています。
燃料をうまく制御して、事故が起きた際には速やかに冷やすということが、安全に原発を運用するためには重要なのです。
そこで、次世代の原子力発電として注目されている技術の1つが、冷却材を必要としない溶融塩原子炉です。
では、この原子炉はいったい普通の原子炉と何が違うのでしょうか?