「最後の晩餐」の材料の内訳まで特定
トーロンマンが亡くなったのは、紀元前405年〜380年の間で、年齢は30〜40歳でした。
首に巻かれたロープから、何らかの儀式のために首を吊られ、泥炭地に寝かされたと考えられています。
泥炭地は、豊富な水分量とミネラル分を保ち、大量の酸を放出することでバクテリアの繁殖を防ぎます。
そのおかげで、遺体の乾燥や腐食が防がれ、およそ2400年もの間、水々しい状態を保つことができたのです。
また、デンマークの寒さも保存に一役買ったと言われます。
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1951年にはすでに、トーロンマンの腸内におかゆを食べた痕跡が発見されています。
しかしその後、腸を分析する技術が向上したことから、研究チームはトーロンマンの最後の晩餐をもう一度調べてみました。
その結果、1951年の研究はかなり正確でありましたが、食事の材料の割合など、いくつかの点で見落としがあったことが分かっています。
それによると、おかゆの内訳は、大麦が85%、サナエタデという草が9%、亜麻が5%でした。
残りの1%には、オオツメクサ、アマナズナ、アカバナといった多様な植物が見つかっています。
また、化学物質とタンパク質の分析により、亡くなる約12~24時間前に、おかゆと一緒に脂肪分の多い魚を食べていたことも特定されました。
当時のデンマーク人は魚を食べていたとはいえ、それほど日常的に食していたわけではありません。
さらに大腸の一部からは、鞭虫(べんちゅう)や回虫のほか、泥炭地の遺体では初となるサナダムシの寄生も確認されました。
これは、トーロンマンが魚や肉を生または加熱不十分な状態で食べたり、汚染された水を飲んだりしたことが原因と見られます。
研究主任のニーナ・ニールセン氏は「トーロンマンの死因はまだ謎が多いですが、この食事が大きな手がかりになる」と指摘。
「現時点での私たちは、トーロンマンが儀式の生け贄に捧げられたと考えています。当時の社会では、儀式のために泥炭地を利用することが一般的でした。
トーロンマンの絞首刑にされる前に、儀式の一環として、最後の食事を取ったのかもしれません」と述べています。