研究者はブラックホールの裏側のフレアを観測した
研究者はブラックホールの裏側のフレアを観測した / Credit:Dan Wilkins/Stanford University,Stanford astrophysicists report first detection of light from behind a black hole
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「時空の歪み」でブラックホールの裏側の光が初めて観測される

2021.07.29 Thursday

物の裏側にあるものは普通見ることができません。

ブラックホールは光さえも吸い込む天体のため、なおのこと、その裏側を見ることは難しいように感じます。

しかし、スタンフォード大学の天体物理学者ダン・ウィルキンス氏は、ブラックホールの観測中に奇妙なパターンのX線フレアを発見しました。

理論によれば、これはブラックホールの裏側で起きたX線フレアと一致しているといいます。

これはブラックホールの強力な時空のゆがみと、周辺の強力な磁場によって背後が見えるという最初の証拠です。

この研究の詳細は、7月28日付で科学雑誌『nature』に掲載されています。

Stanford astrophysicists report first detection of light from behind a black hole(Stanford University) https://news.stanford.edu/2021/07/28/first-detection-light-behind-black-hole/ XMM-Newton sees light echo from behind a black hole(ESA) https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2021/07/XMM-Newton_sees_light_echo_from_behind_a_black_hole#.YQIZTP--lJM.link
Light bending and X-ray echoes from behind a supermassive black hole https://www.nature.com/articles/s41586-021-03667-0

最初はブラックホールのコロナの観測だった

スタンフォード大学 カブリ素粒子天文物理学・宇宙論研究所(KIPAC)の研究員であるウィルキンス氏は、8億光年離れた銀河の中心にある超大質量ブラックホール「I Zwicky1」を観測していました。

彼が調べていたのは、ブラックホールコロナの放つX線です。

コロナとは加熱された荷電粒子(プラズマ)の大気のことで、ブラックホールは太陽と同じようにこのコロナを形成します。

紫に光るのがブラックホールのコロナのイメージ。コロナはブラックホールから離れるとき(画像の中央と右)、一旦内側に集まり明るく輝くフレアを起こします(画像の左)。しかし、なぜコロナのシフトが起きるのかはよくわかっていません。
紫に光るのがブラックホールのコロナのイメージ。コロナはブラックホールから離れるとき(画像の中央と右)、一旦内側に集まり明るく輝くフレアを起こします(画像の左)。しかし、なぜコロナのシフトが起きるのかはよくわかっていません。 / Credit:NASA/JPL-Caltech

ブラックホールに物質が落ちるとき、物質は数百万度の超高温に加熱され、電子が原子から分離(電離)して、磁化されたプラズマを発生させます。

これはブラックホールの強力な回転に巻き込まれて磁場を形成し、ブラックホールの上空へ巻き上げられて崩壊します。

これが私たちの太陽の周りの現象と似ているため、「コロナ」と呼ばれているのです。

そしてこの現象が起きるとき、磁場がちぎれて周囲を加熱し、高エネルギーの電子(X線)を発生させます

このX線を解析することでブラックホールの特徴を調べることができます。

そのためウィルキンス氏は、ESAのX線観測衛星「XMM-Newton」を使って、ブラックホールのX線観測を行っていたのです。

しかし、この観測の中に、非常に奇妙なものが映っていたのです。

次ページブラックホールの裏側が正面から見えていた

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