重力の遮断がより純粋な触覚を与えていた
バランス感覚そのものが遮断されていないのに、なぜ触覚の判断力が強化されたのか?
答えの鍵はバランス感覚をうみだす器官「三半規管と前庭」にありました。
人間のバランス感覚は回転を感知する三半規管と上下と重力を感知する前庭から生じる刺激を組み合わせることで生成されています。
しかし横になると、上下と重力にかかわる情報を発信する前庭からの信号が妨げられ、バランス感覚を構成する情報の一部が抜け落ちた状態になり、バランス情報の信頼性が低下します。
すると体はバランス情報の評価を下げ、触覚情報の相対的な比率を上げることで、より正確な状態の把握を行おうとします。
その結果、触覚の判断力が上昇したのだと、研究者たちは結論しました。
横になることは誰もが行う動作であるため、慣れ過ぎていて変化を確認することは困難でした。
しかし「腕組み実験」というワイルドカードを使うことで、横になることによるバランス感覚の変化とその影響を、浮き彫りにすることができたのです。