暴走星の起源を探る
今回の「LP 40-365」のデータを、分析した研究チームは、これがただ爆走しているだけでなく、およそ9時間に1回という速度で自転していることに気づきました。
私たちの太陽がおよそ27日(地球時間)に1回転という自転をしていることを考えると、これはかなりの高速回転に思えます。
しかし、研究者によると超新星のような壊滅的な出来事を経験した物体の場合、9時間という自転周期はむしろ遅いのだといいます。
そして、この緩慢な回転が意味するものは、この星が2つの星が回り合う連星系の一部で、伴星の物質を奪い取っていたということなのです。
白色矮星のような高密度な天体が、互いに接近して集会していると、1つの白色矮星が、もう1つの白色矮星の物質を奪い取って膨れていきます。
そして、チャンドラセカール限界と呼ばれる星の質量限界に達すると、Ⅰa型(いちえーがた)超新星と呼ばれる爆発を起こすのです。
これはNASAによれば、宇宙で発生する最大の超新星爆発です。
通常、どの星が「奪われた側」でどちらの星が「奪う側」なのか判断するのは困難です。
しかし、物質を奪われている星は回転速度が速くなると予想できるので、今回比較的回転の遅かった「LP 40-365」が、物質を奪って爆発した側だろうと研究チームは確信しています。
つまり、この星は爆発した星の破片なのです。
この爆発は、連星の両方の星を吹き飛ばしたと考えられますが、現在見つかっているのは「LP 40-365」だけです。
これは非常に奇妙で珍しい星です。
そのため、研究者たちはどういった条件や状況で、こんなことが起きるのか興味を向けています。
特に興味深いのは、今回の超新星の生存者は金属が豊富だということです。
天文学者がいう金属とは、私たちの一般的な認識とは異なり、水素やヘリウムより重い元素のことを指します。
太陽は主に水素とヘリウムで構成されているため、それとは少し異なる恒星だったと考えられるのです。
まだわかっていることは少ないですが、この暴走星は非常に移動速度が速いため、確実に天の川銀河からは飛び出して、外の宇宙へと飛び去ってしまうとのこと。
超新星から生き残る星、その謎もいずれ解明されるのでしょうか。