曖昧な土星のコア
マンコビッチ氏の調査結果は、土星のコアが硬い岩石の球体ではないことを示していました。
それは氷と岩石が液体金属の中に拡散したスープのような曖昧なコアだったのです。
これはスラッジ(エンジン内部などに溜まる燃えカスなどの沈殿物)のようなものだ、とマンコビッチ氏は語ります。
「惑星を覆う水素とヘリウムのガスは、惑星中心に向かうほど、徐々に岩石や氷と混ざり合っていきます。
これは地球の海の深層にいくほど塩分濃度が高くなり安定した構成になるのに似ています」
リングに見られる土星の重力場は、特定の周波数で振動しているため、それは非常に内部が安定した構成になっていることを示しています。
土星の中心は、こうした液体金属となったガスと岩石などがドロドロと混ざりあった、曖昧なコアとして形成されている可能性があるのです。
彼らの調査は、さらにこの土星のコアが地球全体の55倍の質量であり、そこに含まれる氷と岩石は地球質量のの17倍であることを示しています。
残りは水素とヘリウムの流体で、さらにこの曖昧なコアは土星の直径の実に60%の範囲まで広がっているといいます。
地球のコアの直径が、地球全体の約20%程度のサイズであることを考えると、土星のコアかなり広範囲に広がった特殊なものだといえます。
今回の結果が事実であるかを示すには、まだ調査が必要でしょうが、これは土星の特殊な内部構造を示す強力な証拠となるでしょう。
また、同じガス惑星である木星についても、この土星と同じように中心は曖昧なコアである可能性が高いと考えられます。
ガス惑星は、これまでは岩石の塊のコアが、ガスを引き寄せて形成されたと考えられてきました。
しかし、今回明らかになった事実は、その予想を覆すことになり、岩石とガスは早い段階から集まって惑星形成のプロセスに取り込まれた可能性を示しています。
地面がないどころか、コアさえ拡散した曖昧な状態とは、ガス惑星は本当に不思議な惑星です。